ブラジルのファベーラ(スラム街)
2016年の世界的な催し物といえばオリンピック。
その舞台はブラジルのリオデジャネイロで2014年のワールドカップに続き、再び世界中から注目された。
祭典期間中は同国の治安についてもよく取り上げられていたが、実態はどうなのか?
私がリオの町を訪れたのはワールドカップが始まる直前の2014年5月。
コルコバードの丘にそびえ立つキリスト像や美しいコパカバーナビーチなど有名な観光スポットが多く、人々を魅了する都市。
だが一方でリオだけで約700ものファベーラと呼ばれるスラム街があり麻薬抗争、警察・政府との対立で毎日銃弾が飛び交い死者が出ている。
そんなファベーラは観光スポットのすぐ近くにも数多く存在する。
例えば「リオのカーニバル」の会場裏やキリスト像が立つ丘の斜面など。
※映画「シティ・オブ・ゴッド」は事実に基づいたファベーラの実態が描かれている為、興味のある方はご覧下さい。(過激な描写の為、要注意)
旅のテーマである「その国の実状を知る」を実現する為ファベーラで生まれ育ったガイドを雇い、連れて行ってもらった。
このツアーの幕開けは衝撃的だった。ファベーラ近くのトンネル内での出来事。
後方からパトカーのサイレン音が近づいてくるなと思っていたら、ガイドが車を停車し窓を全部閉めた。
その直後、後方から散弾銃を持った警察官の集団が猛スピードで通り過ぎた。パトカーの助手席にいる警官は皆、窓から身を乗り出し、銃を前方に向けてかまえていた。
映画のシーンでしか見たことの無い光景が、そこにはあった。
「ホントに大丈夫?」と既にビビっていたが、ファベーラに到着。ブラジルのファベーラとネットで検索し、画像を見て頂ければと思いますが簡素な家が密集し(基本的には不法に家を建てている)電線はぐちゃぐちゃ。
入り組んだ薄暗い路地が多く、山や丘の斜面に存在する。
ゴミの悪臭、裸足の子供たち。
泥だらけの格好でボロボロのボールを追いかけ、サッカーを楽しんでいた。
※因みにネイマールやロナウドといった有名なサッカー選手もファベーラ出身。
親に良い暮らしをプレゼントしたいというハングリー精神と過酷な環境でサッカーをしているからこそ、常にブラジルは強いのだろう。
山の斜面にあるファベーラからは、リオの町を一望できる。
彼らは海岸沿いに住む富裕層の暮らしを、どんな眼差しで見ているのか。ニュースでも取り上げられていたが、貧困層の多くはワールドカップやオリンピックを歓迎していなかった。
実際、ワールドカップ直前なのに町は全く盛り上がっていなかった。
一部の富裕層以外は、国が祭典にお金を使うより、先に解決せねばならない問題が山積みだろうと考えていたので、毎日デモが行われていた。
世界中が注目する祭典を実行する為、スタジアム周辺のファベーラに住む方々は立ち退き命令が下され、家が壊されたらしい。
不法に家を建てている場所の為、仕方が無いのかもしれないがこれがブラジルの実状。
現在、日本でも東京オリンピックに向けての課題・問題に対する議論が活発化しているが、ブラジルのことを思うと「何とも幸せな議論ではないか」と感じてしまう。
▼▼ このコバナシを書いた人 ▼▼Ueda